2016年5月21日 @千駄ヶ谷区民会館 甫守 一樹
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目次
告発事実
- 第1 平成25年7月頃からのタンクからの汚染水漏れ
- 第2 陸側遮水壁設置の先送り
- 罰条 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律
- 第3条 業務上必要な注意を怠り、工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二百万円以下の罰金に処する。
告発事実1の不起訴理由①
放射性物質排出の立証困難
- 地下水に混入した放射性物質が海に達したとは認め難い
- 排水路から海に流出した可能性は否定できないが、各所の放射能は検出限界未満
告発事実1の不起訴理由②
危険の発生の立証困難
- 放射性物質濃度の上昇データがない
- 福島県沖の海水や海産物中の放射性物質の排出原因が特定困難
告発事実1の不起訴理由③
事業活動に伴う「排出の過程」とは言えない
- 循環器冷却システム運用において、汚染水の排出は想定されていない
- 平成23年6月からタンクエリアのパトロールを実施していた
等から、事業の活動に伴う「排出の過程」とは言えない。
告発事実1の不起訴理由④
過失(予見可能性)の立証困難
- フランジ型タンクは広く一般に使用され、福島第一原発でも、本件事故時まで2年以上、305基まで増加
- 微少漏えい後、ボルトの増し締め等で微少漏えいが見られなくなり、土堰堤等による囲い込み等も行われた
等から、汚染水が海に達することまで具体的に予見可能であったと立証する十分な証拠があるとは言い難い
告発事実2の不起訴理由①
放射性物質排出の立証困難
- 水封理論には物理学的に異論はない
- 地下水の放射性物質濃度は滞留水(数千万Bq/L)と比較すると極めて低濃度
告発事実1の不起訴理由③
事業活動に伴う「排出の過程」とは言えない
- 滞留水は水封の維持により「貯留」していた
- 循環器冷却システム運用において、滞留水の排出は想定されていない
等から、事業の活動に伴う「排出の過程」とは言えない。
告発事実1の不起訴理由④
過失の立証困難
- 汚染水の海洋流出防止のためには海側遮水壁設置で十分
- 陸側遮水壁設置の工事に技術的問題があった
等から、陸側遮水壁設置を回避義務として課すことは相当ではない
個人的な感想
- 「立証困難」が乱発されており、真摯な捜査が行われたとは考え難い
汚染水が漏れていないなら血税を投入した凍土壁は要らないはず - 原子力事業者に要求する注意義務の水準が低い
- 事業活動に伴う排出要件については、判例が障害
- 検察審査会によっても不起訴になるのであれば、立法的措置が必要