事件番号 平成28年刑(わ)374号
平成30年(2018年)7月11日
東京地方裁判所 刑事第4部 御中
裁判長 永渕健一 殿
福島原発刑事訴訟支援団
福島原発告訴団
福島原発告訴団弁護団
日頃の活動に敬意を表します。
私たちは、東京電力福島第一原発事故により強制起訴された、勝俣元会長ら東京電力旧経営陣3被告人の業務上過失致死傷事件で、被告人らを告訴・告発した福島県民などからなる団体です。
事故から7年4ヶ月、事故発生後政府が発出した原子力緊急事態宣言が解除されていない中、刑事裁判を通じて、東京電力福島第一原発事故の真相と刑事責任の所在が一日も早く明らかになることを願うものです。
平成28年2月に強制起訴され、平成29年6月に第1回公判が開かれた3被告人の業務上過失致死傷事件は、本年7月6日で第19回の公判期日を終えました。これまで「事故は仕方がなかったのか、注意していれば事故は回避できたのではないか」、争点の地震津波の予見可能性と結果回避可能性を巡り、証人尋問が急ピッチで進められてきました。
東京電力は、政府の地震調査研究推進本部の長期評価に基づき、15.7メートルの津波高を予測して、対策として防潮堤の工事などを検討しながら、武藤被告人ら経営陣の判断でこれを先送りにした結果、過酷事故を起こし、双葉病院の患者さん44名はじめ多くの人々を無念の死に追いやりました。
裁判所として、本事件の判断にはこの大津波と事故の現場を直接見ていただくことが必要不可欠だと思います。現在、検察官役の指定弁護士が裁判所に対して、現場検証等の実施を申し立てると仄聞しております。
1号機原子炉建屋並びに3号機原子炉建屋で水素爆発が起き、それによって飛び散った瓦礫に接触するなどして傷害を負った被害現場、また、原子力発電所から南西約4.5キロメートルに位置する医療法人博文会双葉病院(福島県双葉郡大熊町大手熊字新町176番地の1所在)と南西4キロメートルに位置する医療法人博文会介護老人保健施設ドーヴィル双葉(同県双葉郡大熊町大字熊字新町369番地の1所在)の患者や入所者が2度の爆発によって避難を余儀なくされ、その避難の過程ないし搬送先で、次々と尊い命が奪われましたが、その施設や搬送先、搬送先までのルート、さらに、避難指示が出された住民等の暮らした居住地などの現場を検証することは、被害の実態をつぶさに把握し、刑事責任の深刻さを裁判所が認識される上で必要不可欠と考えます。
私たちは、東京電力福島第一原発事故の原点に帰り、本件事故被害者が傷害を負った現場や尊い命が奪われた44名が治療・看護を受けていた現場などを是非、現場検証などの手段で、見分していただくことを要請します。よろしくご検討をお願いします。
以上