福島原発刑事訴訟支援団ニュース第19号 青空

「高裁は重大な事実誤認、審理尽くさず」指定弁護士が上告趣意書!
「最高裁は口頭弁論を開き、高裁判決を破棄するよう求める署名」を広げよう!:佐藤和良

佐藤 和良(福島原発刑事訴訟支援団団長)

福島原発刑事訴訟支援団のみなさま

5月28日、「今こそ最高裁へ!東電旧経営陣の責任をただす 第5次最高裁前行動&東京集会」が行われました。

東電福島第一原発事故の責任をめぐり、東京電力元経営陣3名が業務上過失致死傷罪に問われている東電刑事裁判は、一審、二審と全員無罪とした判決が下されましたが、23年1月に指定弁護士が最高裁に上告、23年9月に上告趣意書を提出して、現在最高裁に係属中です。

福島原発刑事訴訟支援団は、最高裁前で毎月行動を行い、この不当判決の破棄と、日本における最大の公害事件であることを鑑み、大法廷に回付して口頭弁論を開くよう求めてきました。さらに、この刑事事件の係属部である最高裁第二小法廷の草野耕一裁判官が、東京電力と密接な利害関係のある西村あさひ法律事務所の代表を務めていたことから、草野裁判官にこの事件の審理から外れるように署名を集め、同裁判官の回避を求めてきました。

午前10時、夜半からの雨もおさまり、最高裁正門前には、弁護団も含めて多くの人が参集しました。福島原発刑事訴訟支援団団長の挨拶、弁護団の海渡雄一、大河陽子両弁護士の力強いスピーチ、全国からかけ参じた避難者のアピールに続き、最高裁正門前から最高裁判事の部屋に向かって、「最高裁は口頭弁論を開け!」「草野判事は自ら身を引け!」「最高裁は原発事故の被害に向き合え!」とシュプレヒコールをあげ訴えました。

その後、草野判事の回避を求める署名の第4次分1,047筆(累計13,620筆)を担当官と面談して提出、面談した弁護団はじめ被災者ら17人が、口々に最高裁への意見を述べ、司法の独立した判断の重要性、原判決の破棄、口頭弁論の開催、草野判事の回避、公正判決の実現などを訴えました。

午後、集会が開かれ、大河陽子弁護士が「東電株主代表訴訟と東電刑事裁判が明らかにしたこと」を報告、海渡雄一弁護士が「福島イノベーション・コースト構想の危険」、佐藤和良支援団団長が「原発サイト内の状況と汚染水の海洋投棄」、武藤類子告訴団団長が「福島の現状 甲状腺がん・住宅問題など」をそれぞれ報告しました。

東電福島第一原発の事故は、今も収束せず、被災地に新たな被害を引き起こし続けています。

ALPS処理汚染水の海洋投棄とその作業に伴う事故、小児甲状腺がんの多発や災害関連死の増加、避難者住宅の提供打ち切りによる裁判や追い出しの強制執行、イノベーションコースト構想のもとに行われる被害者の望みとは乖離する復興策など、福島原発事故の責任が取られないまま、福島は人間の復興を目指す本来の姿とは異なる世界に変貌しつつあります。

事故後も悪化する東京電力の企業としての無責任体制を変えるためにも、東電刑事裁判の最高裁の判断は極めて重要です。最高裁は弁論を開いて原判決を破棄し公正な判決を!第6次の最高裁前行動は、7月17日午前10時です。最高裁が、被害にしっかりと向き合い、公正な判決を下すよう、諦めず繋がってまいりましょう。
(2024年6月5日)


東電の汚染水処理過程で引き続くトラブルに示される綱紀弛緩は司法の怠慢に起因するものだ:海渡雄一

海渡雄一(福島原発告訴団弁護団)

信じがたいトラブルの続発

最近、福島第一原発の廃炉・汚染水処理作業に関連して、信じがたいようなずさんな現場管理に起因する深刻な放射性物質による環境汚染事故が続発している。4月の最高裁要請行動において、私たちは、これらの事故の内容について指摘し、事故は、東京電力の原子力安全の確保に関する、綱紀の著しい弛緩によるものであると指摘する意見書を提出した。

2023年10月発生の洗浄水被り・作業員2名の被ばく事故は基本事項の不遵守、基本事項の管理欠如が原因

2023年10月に福島第一原発の多核種除去設備(ALPS=アルプス)の配管洗浄作業で高濃度の汚染廃液を浴び、作業員2名が入院するという事故が発生した。

ジャーナリストの政野淳子氏による「地味な取材ノート」などによれば、10.26発表の洗浄被り事故は、二人目の作業員も10万CPMの被ばくであったことが分かった。福島第一原発事故の廃炉・汚染水処理の現場における高汚染環境、ずさんな作業管理の実態が次々に明らかになっている。

この事故は、ALPSのうち、すくなくとも既設ALPSと増設ALPSについては、炭酸塩で配管が詰まってしまうという基本的な安全上の問題があることに起因している。東電と規制委員会は、長く続いてきたこの問題を看過し、恒久施設による対策を取ることなく、この炭酸塩を硝酸によって、仮設の装置と硝酸で炭酸塩を溶かすという異常な工程で、その場しのぎの作業をしてきた。この配管の洗浄作業では薬液(硝酸)と配管の内側にたまった塊(炭酸塩)が反応してガスが発生する。このため、ガスがホースの先から出る勢いでホースが動くことを想定し、タンクのそばにある鉄パイプにひもでホースを縛っていたという。縛った位置はホースの先から約1.5メートルという。ガスが出た時にホースの先が大きく動き、タンクからすっぽ抜けてしまった。東電は、ホースを縛る位置を具体的に決めていなかったという。

洗浄廃液数リットルが飛散したということであり、廃液の汚染レベルは、ストロンチウム90などの放射性物質が凝縮され、ベータ線を出す放射性物質の濃度は1リットル当たり43億7600万ベクレルにまで達していたことを東京電力が会見で認めている。

汚染水処理工程の規制審査において、この問題は全く審査されておらず、看過しがたい欠落があったといえる。労働者の被ばく量を見ても、この問題は極めて重大なものである。

原子力規制委員会の山中伸介委員長も記者会見で「東電のマネジメントの問題は明らか。東電の社員が現場に出て、現場を分かって作業を進める。そういう現場力の向上が必要だ」と述べている。

12月11日に判明した被ばく事件

また、2023年12月11日に新たな被ばく事故が発生していたことも明らかになった。政野淳子氏によれば、使用済燃料プール異物防止用フェンスの除染作業の際に発生した。「除染」とは、「濡れウェス」とあるように、紙を水に浸して濡らしてフェンスについた放射性物質を手で拭き取っていく作業だという。爆発した原発の廃炉作業とはこんな原始的な作業の連続なのである。

「前室内チェンジングプレイス」とは、このレッドアルファゾーンから出る際に、アノラック(カッパ)や全面マスクを拭き取る場所であり、そこには放射線管理員(着脱補助員)がいる。放射線管理員は、拭き取りがしっかり行われることを補助する役割なのに、つまりはそれに失敗したのである。「前室内チェンジングプレイス」から出た後に、別の場所で全面マスクを脱いだときに、あごなどについていた汚染が鼻に入った、というのが、東電の説明である。

2月7日には汚染水が漏出する事故が発生した

2月7日には汚染水の浄化装置で、放射性物質を含む水が屋外に漏れ出す事故が発生した。東京電力が原子力規制委員会に2月19日に行った報告によると、事故の原因は、装置内の配管の弁が開いたままになっているのを作業員が見落としたまま、水を通す作業を行ったことだとしている。手順書で弁を閉める操作を行うことを明記していなかったことも原因として説明している。

原子力規制庁は、東京電力内で弁の開閉を管理する部署が明確でなく、作業前に弁の状態が管理できていなかったなど、作業ルールや安全対策を定めた「実施計画」の違反に当たる疑いがあると指摘し、再発防止の徹底を求めている。

われわれは、東電の綱紀がここまで弛緩したのは、原発事故の刑事責任が司法によって見逃されているためであると考えている。

草野裁判官は速やかに回避し、事件を大法廷で審理せよ

被害者らは、指定弁護士が提出された上告趣意書にもとづいて東京高裁判決の破棄を求めている。そして、被害者らは、公正な裁判を受けるため、東京電力との密接な利害関係を指摘される西村あさひ法律事務所の代表であった草野耕一判事について、本件の審理への関与を回避されるよう求めている。

そして、事件を、大法廷に回付し、戦後最大の公害事件である福島原発事故の原因と責任について、最高裁大法廷における審理を行い、最高裁としての良識ある判断を示すよう求める。司法には、相次ぐ近時の東京電力の綱紀弛緩に責任があることを自覚し、毅然とした判断を示されたい。

第13回さよなら原発福井県集会2024in敦賀 島崎邦彦さん(日本地震学会元会長) 特別講演より

ごく一部を簡単にまとめたので紹介いたします。講演全体はYOUTUBEよりご覧ください。
https://www.youtube.com/live/t8x-Kskq7nE

地震本部は2002年に、津波地震が日本海溝沿いどこでも起こりうると警告を出した。これを出そうとしたときに、まず防災担当大臣が「出すな」と文句をつけた。東電はこの時の発表を受けて福島原発敷地への津波高さを計算し、高い津波が来ることが分かっていながら対策を打ち切ってしまった。津波地震が来るということが沿岸の人たちに広まらなかったのは、原子力ムラの人たちが隠そう、抑えようとしたからだ。もし2002年の警告を隠したり抑えたりしなければ、原子力ムラがなければ、もっと津波の被害者も減らせたのではないか。

3.11の津波は貞観地震の再来ではないかと言われている。地震本部でも貞観地震について発表しようと準備していた。当時は知らなかったのだが、この時地震本部の事務局が東電との秘密の会合を作って相談していた。発表の内容を東電に見せて修正をもらうために待っていた。そのため3.11の直前に発表できたはずなのに遅らせてしまった。地震の直前に発表していればみんな逃げたはずだ。2万人の津波被害者をもっと減らせたはずだった。

【動画をYoutubeへアップ】司法の劣化を許さない 6・17最高裁共同行動

福島原発事故被害者4訴訟に対し、最高裁第二小法廷が国の責任を否定した判決を出してから2年。
裁判所は人権を守っているか。良心と独立、三権分立は保たれているか。
2024年6月17日、最高裁に係属している訴訟当事者はじめ全国の市民が結集して裁判所を囲みました。

  • 最高裁判所を取り囲むヒューマンチェーン
    (東門→正門→南門→西門→国立劇場西側)
  • 呼びかけ団体:6・17最高裁共同行動実行委員会

最高裁は口頭弁論を開け! 東電の刑事責任を問う 第6次最高裁行動&東京集会

7月17日(水)

  • 10:00~10:30 最高裁前行動
  • 13:30~15:00 東京集会 全国町村会館 第1会議室
    (千代田区永田町1-11-35 地下鉄永田町駅3番出口徒歩1分)
  • 講演 添田孝史さん「東電原発事故、まだ隠されていることは多い」

事務局からのお知らせとお願い

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預金種目:当座
店名:二二九(ニニキユウ)
口座番号:0120291


ニュースの名前「青空」は、強制起訴が決まった2015年7月31日の東京地裁の前で見た「どこまでも晴れわたった青空」から命名しました。表題は佐藤和良団長の書によります。

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福島原発刑事訴訟支援団ニュース 第19号 青空
2024年6月11日発行
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