2018年6月20日 第18回公判期日報告 証人 金戸俊道「 高尾氏を補佐して福島原発における津波対策の実現に努めたが、武藤氏らの壁に阻まれ実現できず」:監修 海渡雄一

2018年6月20日 第18回公判期日報告
証人 金戸俊道

高尾氏を補佐して福島原発における津波対策の実現に努めたが、武藤氏らの壁に阻まれ実現できず

弁護人8人 指定弁護士5人 被害者代理人2人
(凡例… 指:指定弁護士資料 弁:弁護人資料)
作成 佐藤真弥
監修 海渡雄一

開廷9:58
裁判長:甲A249~251と、甲A254は同意ということでいいですか?では採用します。
証拠要旨告知
【甲A249 土木学会原子力土木委員会・津波評価部会第四期 H21.10~H24.3】
委員名簿、部会議事録1枚目・出席者、議事録案、経過報告書、最終報告書
渋村:高尾氏が部会委員、金戸氏が幹事であることがわかる。
【甲A250 土木学会原子力土木委員会・津波評価部会 研究その3】
確率論的津波ハザード解析の方法、確率論的津波評価
【甲A251 土木学会 受託研究報告書 第四回】
波源モデル、三陸沖~房総沖
渋村:海溝沿い領域の北と南を分断したこと、どこでも発生するが、南部はすべり量が少ないこと、南部は1677延宝房総沖を設定することが記載されている。
【甲A254 日本原電・坂上発、金戸宛メール】
渋村:「非常に厳しい結果」、検討内容が記載されている。
裁判長:証人尋問に移ってよいか。
証人入廷

1 証人の経歴

裁判長:お名前を言ってください。
金戸:金戸俊道です。
宣誓
渋村:東電の事故対策について聞く。現在の所属は?
金戸:原子力設備管理部の所属で土木調査グループマネジャー(GM)。
渋村:どのような仕事をしているか?
金戸:原発に関わる地盤や活断層の評価、地震や津波の評価など。
渋村:入社したのはいつか?
金戸:平成8年入社。
渋村:経歴書を示します。
金戸:この通りです。
渋村:平成9年は土木グループにいたと。何をしていたか?
金戸:福島第一7・8号機増設に関わる土木関係。
渋村:仕事の内容はどのようなものか?
金戸:今とおよそ同じ。副主任で、活断層や津波の評価をしていた。
渋村:平成15年に日本原電に出向し、その後、東電の土木技術グループに戻った?
金戸:はい。
渋村:その後、新潟県中越沖地震対策センターに所属、東通に異動するまで所属した?
金戸:平成19(2007)年7月に中越沖地震が起きて、中越沖地震対策センターができた。地質調査をした。そのあと福島第一・第二の耐震バックチェックや、東通1号機設置許可の活断層評価にかかわった。
渋村:土木技術グループでは何を?
金戸:津波関係は工事基本設計などを担当した。東通(原発新設に関わる業務)を兼務していた。
渋村:兼務したことで何か変化があったか?
金戸:中越沖地震対策センターではライン業務で土木グループに所属した。東通を兼務して、土木技術グループとして東通を担当した。土木グループのGMが酒井(俊朗)さん。課長が高尾(誠)さん。土木技術グループのGMは都築さん。

2 2007年末頃から福島第一の津波BC作業開始

渋村:平成19年7月に土木グループに着任してからについて聞く。
福島第一のバックチェック(BC)について、酒井氏、高尾氏と証人で担当した?
金戸:間違いありません。
渋村:酒井GMと相談しながら業務に当たった?
金戸:酒井とも、高尾とも相談しながら。
渋村:いつからBCについて検討を始めた?
金戸:平成19年末から検討を始めた。解析結果が3月か4月に出たのをきっかけに打ち合わせを始めた。
渋村:東電設計との打ち合わせか?
金戸:はい。
渋村:耐震BCの審査指針を知っていたか。当時そのペーパーを見たか?
金戸:はい。
【指1 保安院文書 バックチェックルール 2枚目】
「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波」
渋村:保安院から示されたバックチェックルール(BCR)を知っていたか?
金戸:はい。
渋村:当時見ていた?
金戸:はい。
【指2 保安院文書 バックチェックルール】
「既往の津波の発生状況、活断層の分布状況、最新の知見等を考慮して施設の供用期間中に極めてまれ~津波を想定し、数値シミュレーションにより評価することを基本とする」
渋村:津波について、新指針では何を言われている?
金戸:基本的に指針に書いてある通り。「極めてまれ」な津波を評価する。BCRでは加えて、既往津波や活断層も。
渋村:平成14(2002)年の、津波評価技術との関係ではどういわれている?
金戸:津波評価技術は平成14年2月公表。それ以降に出ている知見を加える。(平成19年の)秋から東電設計と打ち合わせを始めた。
渋村:きっかけは何か?
金戸:きっかけは覚えていないが、福島第一のBCがあったので、上司に言われてではないかと思う。
渋村:誰からか?
金戸:酒井か高尾なのは間違いない。
渋村:東電設計側は誰と打ち合わせを?
金戸:久保(賀也)さん。
渋村:平成19年のいつ頃からか?
金戸:よく覚えていないが、資料によると11月頃からと思う。
【指3 打合せメモ H19.11.1 (久保・金戸の打合せ)】
渋村:赤の書き込みは誰によるものか?
金戸:私です。
渋村:「推本「福島沖」という記載がある。長期評価についてはどんな打ち合わせをした?
金戸:久保さんから、地震本部の「海溝沿いのどこでも起きる」見解をBCに取り入れないとまずいのでは、とアドバイスされた。
渋村:東通原発ではどう対応した?
金戸:基準地震動の策定として、地震本部の見解をそのまま取り入れているので、津波についても地震本部の「どこでも起こる」を取り入れないと、東電として矛盾があるのではと、久保さんに言われた。
渋村:打ち合わせの結果を報告したか?
金戸:記憶はないが、間違いなく報告はしたと思う。
渋村:誰に?
金戸:酒井か高尾。もしくは両方に。
渋村:その後も東電設計と打ち合わせを行った?
金戸:はい。
【指4 H19.11.19 東電設計打合せ】
渋村:誰が参加したか覚えているか?
金戸:記憶にはない。
渋村:高尾さんは参加したか?
金戸:はい、記録を見て確認している。
渋村:長期評価について何か話したか?
金戸:19日……あまり記憶が無い。記録に書いてある通り、先ほどと同じことを話したのかと思う。
渋村:長期評価を取り入れるかどうかについて、証人はどう考えていたか?
金戸:基本的には、国の調査研究に関するトップの組織、著名な地震学者が参加しているところが公表した知見だから、耐震BCに取り入れずに審査はできないだろうと考えていた。
渋村:高尾さんも同じ考えか?
金戸:全く同じだと思う。
渋村:耐震BCに取り込むべき理由が、権威ある組織で、トップの学者が集まって出された知見であるから、ということか?
金戸:はい。BCの審議も、地震・津波の専門家、第一人者の方々が集まって審議される。(長期評価は)それに関わるか、近い先生がまとめた評価だ。それを取り入れずにBC報告が妥当とされるのは難しいと思っていた。
渋村:このことについて他社とは連絡を取り合っていたか?
金戸:明確な記憶はないが、何度も連絡を取っていた。
【指5 日本原電 情報連絡会 東電との打合せ記録 H19.11.19】
渋村:19日の東電設計との打合せの後に行われたのか?
金戸:はい。
渋村:日本原電の武田副長はどんな方か?
金戸:津波の担当の方ではない。
渋村:日本原電の打ち合わせ目的は?
金戸:どちらから持ち掛けたのかわからないが、耐震BCをどうしていこうか、福島第一・第二と東海(第二)は近いので、情報交換のために行った。
渋村:下から3つ目の丸、「大幅な見直し」「推本をなぜ考慮しないか、となる。扱いが難しい」とあるが、誰の発言か?
金戸:明確な記憶が無いが、出席者からすると高尾ではないか。
渋村:どういう趣旨の発言か?
金戸:耐震BCについて、推本の長期評価を取り入れずにBCを通すのは難しいと。
渋村:東電内の議論で、早めに方針を決めようと言ったのは誰か?
金戸:高尾ではないか。
渋村:東電設計から資料を入手したか?
金戸:はい。いつだったか記録を確認した。
渋村:入手の指示は誰からあった?
金戸:酒井か高尾。
渋村:いつの、どういう資料か?
金戸:私は担当していないが、確率論的津波ハザードによって、その過程でいろんなパターンの水位計算をしていることを知っている人がいて、その一部を取り出すようにと言われ、私が東電設計に頼んだ。
渋村:土木学会津波評価部会の第二期で確率論評価をやっていて、東電設計が計算したのか?
金戸:今言ったのは電力共通研究(電共研)のことか?
渋村:はい。
金戸:これは電共研ではなく、それをもとに東電設計が計算したものだ。
渋村:どのくらいの水位だったか?
金戸:7.7m。
【指6 東電設計 日本海溝寄り波源 津波高さ H19.11.21】2枚目
朔望平均満潮位 福島第一 5号機前面 最高O.P.+7.7m
渋村:どのような内容か?
金戸:確率論的津波ハザードの手法による、JTT(日本海溝沿い領域)にMw8.3の波源を置いたときの津波高さ。
渋村:3枚目の下の方、7.7mは「概略パラメータ」による解析の数値で、「詳細パラメータ」を用いて検討すると「さらに大きくなる」とあるが?
金戸:ある程度おおざっぱな計算結果。実際の津波評価技術に従ってやる場合、概略パラスタ(パラメーター・スタディのこと)を行った上で詳細パラスタを入れて、より発電所に厳しくなるような選び出しをやる。この時はまだ(詳細パラスタの取入れを)やっていない。やれば高くなる。
渋村:概略だけで7.7mとなった。対策をする必要はあるか?
金戸:はい。当時、福島第一の想定水位は5m後半。対策の必要がある。
渋村:対策を取ることをいつ決めたか?
金戸:いつ決めたかは覚えていない。長期評価を取り入れてBCをやると決めていた。
渋村:長期評価を取り入れる方針とした理由は?
金戸:BCを行って、公表して、先生たちの議論が保安院で審議されて、妥当という評価をもらうためには、日本の権威がまとめた長期評価を入れないでは通せないと思った。
渋村:酒井さんもそう思ったか?
金戸:はい。そうだと思う。
渋村:他社にはどのように伝えたか?
金戸:情報共有は何度もしている。
【指7 H19.12.10 日本原電 高尾課長ヒア(ヒアリング)】
「確率論の検討をしているが、確定論でやらなければならない。」
「酒井GMまで確認」
渋村:高尾さんがこの説明をした内容は知っていたか?
金戸:よく覚えていないが、どこかでは間違いなく共有していた。
渋村:これが土木グループのスタンスだったのか?
金戸:それは間違いありません。
渋村:東電が長期評価を取り入れる方針だということを他社と共有していた?
金戸:はい。
【指8 H19.12.11 推本津波に関する打合せ】
出席者:金戸、安中(東電設計)、日本原電、JAEA、電中研(電力中央研究所)
渋村:目的は何か?
金戸:BCをそれぞれの会社でどうするか情報交換するため。
渋村:電中研とはどんな所か?
金戸:電力会社の様々な課題を研究するところ。
渋村:東電設計の安中さんが出席した理由は?
金戸:安中さんは地震と津波の専門だから、安中さんから推本の知見について意見をもらいたかったのではないか。
渋村:東電(金戸)の発言として、「三陸沖から房総沖どこでも」を否定する明確な材料が無い、BCに取り入れないと、という発言があるが?
金戸:福島沖で発生しないという根拠は無いと理解していた。
渋村:ロジックツリーアンケートのことを発言した理由は?
金戸:「どこでも」という話について、専門家がどんなふうにロジックツリーのアンケートの中に「どこでも」と考えているか、考えないか。分岐のアンケート結果で先生の考えがわかるかと思って。
渋村:アンケートは見たか?
金戸:アンケートの作成には関わっていないが、(結果を)見てはいたと思う。
【指9 H16年 ロジックツリーアンケート (1回目)】
2枚目 Q1-6-1 ①JTT2(福島沖)活動しない ②どこでも起こる
渋村:②が長期評価と同じ考え方か?
金戸:はい。
【指8 H19.12.11 推本津波に関する打合せ】
「Mwについて、土木学会手法では~とどまるのは仕方ない」
渋村:どういう発言か?
金戸:地震本部での評価は、地震の規模はMw8.3より小さい。地震本部の規模をそのまま採用すればいいのではと議論した。しかし、(土木学会の)津波評価技術ではMw8.3としている。津波の大きさを再現するならこれだと。土木学会で定めたMw8.3を使うと。
渋村:「推本を取り入れるなら、土木学会手法で逆断層8.3、正断層8.6」とある。この通り考えたか?
金戸:はい。
渋村:それは土木グループとしての考えか?
金戸:はい。
渋村:酒井さんの了解なしにこのような方針を決めることはあるか?
金戸:それはありえない。
渋村:東北電力は何と言っていたか?
金戸:女川(原発)の話で、日本海溝沿いの発生領域は南北に分けられるという議論。それなら女川は変更がない。長期評価を取り入れると、領域をまたいで評価しなければならず、女川がNGとなってしまう。(領域をまたぐ評価は)できればしたくないと(東北電力は)言っている。
渋村:東電としてはどういう考えか?
金戸:我々は、長期評価を明確に否定できない。(東北電力が言っていることは)それは困難だと。
渋村:その後メールのやり取りはあったか?
金戸:何度もメールをやり取りした。
渋村:どのような回答をしたか?
金戸:あまり記憶はないが、おそらく、難しい、と回答した。
渋村:東電としては、長期評価を取り入れないでやるのは難しいと答えた?
金戸:はい。
渋村:東北電力に合わせるのは難しいと?
金戸:はい。自社のBCをするには、(取り入れないのは)難しい。

3 東電設計への基準津波高シミュレーションの発注

渋村:長期評価を取り入れた津波評価を東電設計に委託したか?
金戸:はい。
【指10 委託承認書 H20.1.11(東電設計への委託)】
提案理由 既設1F、2Fにおいて、想定津波、地震随伴事象の基礎資料
【指11 委託追加仕様書 H20.1.10】
(1)業務目的として (3)津波解析 a, b, c, d, dを検討
渋村:委託した目的は?
金戸:地震本部の見解を取り入れて、津波を評価した結果を知るため。
渋村:委託した時点では、数値をBCに反映するつもりだと?
金戸:私はそういう理解。
渋村:dはどういうものか?
金戸:発注した時は、1F水位低下側に水貯留堰のモデル化をするつもりだったと思う。
渋村:結果が出た後、(津波対策)工事としてdもやることとしたのか?
金戸:……私のずるいところで、(発注時の)想定と違っていたが、そう(沖合防波堤のための解析と)読めるかな、と…。
渋村:7.7mという結果だが、ある程度大きくなると、いつから思っていた?
金戸:いつからとはよく覚えていないが、断層のすべり量を見ると、なんとなく。すべり量を見れば、かなり大きくなるとは気づいていた。
渋村:(平成20年)2月1日の耐震バックチェック説明会で、山下(和彦)センター長などの資料作成をしたか?
金戸:資料はたくさん作っているので、よく覚えていないが、私が作った可能性は高い。
渋村:その時に津波についての資料を作ったか?
金戸:明確な記憶はない。
渋村:説明会についての報告を受けているか。
金戸:記憶はないが、受けたメールに報告があるのでそうだと思う。
【指12 酒井発メール 「1F2F津波対策」 H20.2.4】
「従前評価値を上回る」「1F佐藤GMからも強い懸念」「早期に土木、機電で状況確認をする必要がある」「津波がNGとなると、プラントを停止させないロジックが必要」
渋村:どう受け止めた?
金戸:BCで地震本部の知見を考慮すると、評価は(従来の津波高さを)上回るので、早く検討を始めた方がいいんじゃないかと打診しているのだと思う。
渋村:「7mではハード的な対応難しいのでは」この意味は?
金戸:私も専門ではないが、4m盤に非常用海水ポンプがあるので、波力で大丈夫かな、と疑問がある。
渋村:「土木が検討結果出してからではなく、早期に」これは?
金戸:明確なインプットの数値は出ていないが、上回るのは確実だから。
渋村:「津波がNGとなると、プラントを停止させないロジックが必要」。BCがNGとなれば、即プラントが停止になるか?
金戸:津波がNGとは、水位を超えると重要機器に直結し、プラントの安全性が守れない。社会への説明の方法を考えないといけないということだと思う。
渋村:酒井さんのメールは、どういう指示と受け止めたか?
金戸:関係者で検討を考える。建築(グループ)、機電(グループ)等、部署をまたいだ議論をしろということだ。
【指13 長澤発メール H20.2.5】
渋村:長澤さんとは?
金戸:機器耐震技術グループの副長だと思う。
渋村:「技術検討書」とは?
金戸:課題に対し、検討を加えて方針を決める整理、説明の取りまとめ。
渋村:土木、建築、機械、広報とはそれぞれ何のことか?
金戸:土木は津波の数値入力を決めたり、土木の構造物関係について。
建築は主に建物、建物改造について。
機械は非常用海水ポンプなど。
広報は社会に対して説明をする。
これらの関係者のこと。
渋村:武藤副本部長が、山下センター長経由で海水ポンプを建屋で囲う対策を提案した?
金戸:私は聞いていない。メールでは見た。
渋村:有り得る対策か?
金戸:可能性としては有り得る。
【指14 酒井発 返信メール H20.2.13】
渋村:この打ち合せに向けて、資料を作ったか?
金戸:よく覚えていないが、頼まれるなら私だ。
【指15 金戸発メール】
海溝沿い津波 「添付します」
【指16 金戸発メール 資料7枚添付】
渋村:資料を送った目的は?
金戸:当時把握できる材料、数字がわかるものを共有しようと。
渋村:メールの宛先はどのような人たちか?
金戸:機器耐震グループ、土木グループ、山下センター長がCCに入っている。
渋村:どの会議で共有した?
金戸:社長以下出席の、地震対応打ち合わせで。
渋村:その会議は社内で何と呼ばれていた?
金戸:…御前会議。
渋村:酒井の指示で資料を作ったのか?
金戸:はい。7.7mの数字は見た記憶がある。
【指17 中越沖地震対応打ち合わせメモ H20.2.16】
③「基準地震動Ssに基づく耐震安全性評価」
原子力設備管理部
【指18 「基準地震動Ssに基づく」】
渋村:証人らの?
金戸:12ページに土木グループと。
渋村:7.7mの津波がさらに大きくなる可能性があるとあるが?
金戸:資料を書いた記憶がある。
渋村:この後、東電設計と打ち合わせをしたか?
金戸:はい。委託したのが2月だから、そのくらいから。
【指19 金戸発メール】
「波源決定した」
渋村:酒井さんが、(東電設計との打合せに)建築グループの出席を求めたのはなぜか?
金戸:東通の基準地震動は検討で(地震本部の見解を)考慮している。津波でも福島のBCに考慮しないと不整合が起こる。対策をする建築グループも入れておこうと思ったのでは。
【指25 東電設計内部資料 H20.2.22】
出席者に「菊池 建築G」
渋村:菊池さんはどう言っていたか?
金戸:酒井さんの指示で、菊池さんを入れて、地震動の考え方と不整合はないか検討した。菊池さんは「特に問題ないよ」と。あとは事務的なこと。
渋村:高尾さんが、今村教授の意見を聞きに行った。その資料は作成したか?
金戸:明確には記憶していないが、作成したかもしれない。
【指21】
渋村:これは誰が作成した?
金戸:はっきり覚えていないが、作るとしたら私だろう。
渋村:どのような考えでこれを作ったのか?
有田:(武黒の弁護人・有田知徳弁護士)ちょっといいですか。作ったか覚えていないというものに、何を考えていたか聞くのはおかしいでしょう?
渋村:もし自分が作ったとしたらどう考えたかということを聞いているのです。
裁判長:証人、この資料を見て、どう思っていたかは言えますか?
渋村:では質問を変えます。
この資料を見て、これはどういう資料ですか?
金戸:津波評価の経緯。右下は、(当時の)現状のBCの対象。
渋村:どうしたらいいか相談するということか?
金戸:そう推測する。
【指22 高尾発メール 津波評価今村教授相談結果 H20.2.27】
渋村:宛先はどういう人たちか?
金戸:土木G、建築G、機器耐震Gなど土木関係。津波評価はもちろん、対策を考える人たち。
渋村:高尾さんのメールの理由は?
金戸:先生からのコメントは、地震本部の波源を考慮し、そのまま反映せよと。そうすると、これまでを上回る対策が必要になる。大幅な改造工事が必要となる。検討をしなければならない人に共有をした。
渋村:東電設計の計算結果を待つまでもなく検討をする必要があると?
金戸:はい。
渋村:スケジュール案とは?
金戸:今後どのような予定で進めていくか。
渋村:エンジニアリングスケジュールとは?
金戸:この先仕事を進めていく段取り。工程表。
渋村:改造工事まで?
金戸:この段階で改造工事までとは思えないが。
渋村:今村教授との相談のことは他社にも共有したか?
金戸:したと思う。
【指23 H20.3.19(情報連絡会メモ?)】
(2)東京電力 推本津波の波源考慮すべき 1896、1677
渋村:証人の認識と一致しているか?
金戸:一致している。
渋村:推本を考慮すべきというのは、土木グループの方針か?
金戸:はい。
渋村:東電設計の結果を待っているときか。
金戸:はい。
渋村:波源モデルについて、証人はどう考えていた?
金戸:1896、1677の、より規模の大きい方でやる方が説明性が高いと思っていた。
渋村:どのような波源か?
金戸:Mw8.3。土木学会の波源モデル。
渋村:土木G内ではそう思っていた?
金戸:深く議論していないが、2つの波源では大きい方を使うのが自然な考え方だ。小さくしていい理由はない。
【指23 2枚目】
「浸水するような高い水位」
渋村:このような水位になった場合、どうするのか?
金戸:施設の水密化。それから手順書の作成。
渋村:土木Gによる、エンジニアリングスケジュールの打ち合わせはいつか?
金戸:広報が入っていた記憶はない。いつだったかは……。資料の時期だと思う。
【指24 1F・2F津波水位について 開催案内 H20.3.3】
もうすぐ水位の結果が出る。 大幅に上がることは避けられない。 エンジニアリングスケジュール  キックオフ3月7日
渋村:土木Gでは、結果が出ればすぐ対策を始めると考えていたか?
金戸:基本的にそう。
渋村:水位が高いということが速報値で入っていた?
金戸:速報値で入っていたかどうかは記憶が無い。
渋村:エンジニアリングスケジュールはどこが作った?
金戸:山崎さん。
渋村:3月7日の打ち合わせには、証人は参加したか?
金戸:はっきりわからない。
【指25 津波対策スケジュール打合せ 議事メモ H20.3.7】
「土木、建築、機器耐震Gにて今後のスケジュールを作成するため、スケジュール案を持ち寄り、打ち合わせを実施した」
渋村:集まったのはどういう人たちか?
金戸:土木は福島担当の、水位ではない人。建築は構造設計の人ではないか?機器耐震は、ポンプの耐震の人たちではないか。
渋村:「主な議論」として、「土木Gから津波高さがO.P.+12~13m程度になる可能性」とあるが、これは東電設計の速報値か?
金戸:速報値か、私がすべり量から予測した値か。対策が大きくなると伝えたかった。
渋村:機器耐震Gからはどんな意見があった?
金戸: 10mを超えないと思っていて、それより大きかったので、前提が成り立たないと。この会議だったか分からないが、「守るものが無数にあって事実上対策取れない」という発言があった。
渋村:「上層部へ周知することとした」とあるが、上層部とは?
金戸:(吉田昌郎)部長かな? 部長以上ではないか。
渋村:この後、酒井さんが出したメールは覚えているか?
金戸:覚えていない。
【指26 酒井発メール 「1F/2Fバックチェック」 H20.3.7】
「津波高さが10m超になる旨、土木側から説明があった」
渋村:酒井さんのメールの趣旨は?
金戸:私が、議論が共有されていない中で、10m超の津波、インパクトのある数字を言ったので、拙速にやるな、落ち着いてやれ、の意味ではないか。
渋村:「津波にパラスタやりすぎ」と言われたか?
金戸:地震本部をそのまま取り入れたから。津波は地震本部の見解を土木学会手法に当てはめている。パラスタをして、より安全側にするのは、地震と整合していないのではと。
渋村:パラスタをやりすぎていると?
金戸:というより、地震動と津波が整合していないのでは、ということではないか。
【指27 酒井発メール H20.3.7】
「土木学会流のパラスタ やりすぎ」
渋村:どういう意味か?
金戸:さっきと同じで、数字が独り歩きしている。東電として地震と津波を整合させないと。パラスタと地震とを整合させることを言っているのでは?
【指28 高尾発メール H20.3.10】
パラスタの件 「今村さんに聞いていいか、聞かなくていいか」
【指29 酒井発メール 高尾に返信】
「津波の先生に聞くのは建築とディスカッションしてからがいいと思います」
渋村:どういう意味か?
金戸:あまり覚えていない。三陸北部の波源モデルを土木学会手法でやるのはBCに必要。この議論は枝葉。
渋村:結論はどうなった?
金戸:地震本部の「どこでも起きる」を取り入れて、Mw8.3の波源で土木学会手法でパラスタして、福島沖に波源を置いて計算する。
渋村:酒井さんも納得したか?
金戸:はい。

4 2008年3月東電設計から計算結果を受領し、社内で横断的検討始まる

渋村:東電設計から報告は誰だった?
金戸:久保さんだと思う。
渋村:どんな結果だったか?
金戸:1F南東から最大水位15.7m。
【指30 H20.3.18 東電設計 打合せ】
日本海溝沿い逆断層 主要設備の敷地まで遡上
【指31】
渋村:この2枚目以降、表2-1、概略パラスタとあるが?
金戸:概略パラスタは、Mw8.3、1Fにおいて、最大水位はどこかと。南側で13.810m。これを使って詳細パラスタをする。
渋村:その結果は?
金戸:結果最大値、南側で15.096m。これに朔望平均満潮位をプラスして15.7m。
【指32 修正版 H20.4.18】
渋村:結果は変わったか?
金戸:変わっていない。
渋村:どう思ったか?
金戸:かなり大きいなと。
渋村:どういうことになると思ったか?
金戸:何らかの対策が必要になると。
渋村:何も対策を取らないということがあり得るか?
金戸:対策を取らないことはありえない。
渋村:上司に報告はしたか?
金戸:している。
渋村:御前会議の後、酒井からメールを受けたか?
金戸:明確な記憶はない。
【指33 酒井発メール「御前会議の状況」取扱注意 H20.3.20】
渋村:御前会議でどのような懸念があって酒井さんはメールしたのか?
金戸:メールの前半が津波のこと。
(御前)会議の中で、何でそんなことになったのかについて、知らない人にどう答えるかのQAを整理しようと指示されたと。
渋村:「結果が分かった段階で改造工事する」の意味は?
金戸:BC対策で、津波水位を公表しないでいきなり工事を始めると、何で(そんな大きな防潮堤を造るのか)?となるからでは。ちょっと分からない。
渋村:この後、東電設計と打ち合わせをした?
金戸:どういう対策ができるか、何が効果あるかを。
渋村:鉛直壁の検討依頼は、10m盤に置いた場合のものか?
金戸:南北に特に着目した。どのくらいの高さが必要になるか。
渋村:東電設計への依頼は、酒井さんから了解を得て依頼した?
金戸:よく覚えていないが、基本的にそうだ。
【指34 鉛直壁検討 H20.4.18】
2枚目 図1-1 1F3Dイメージ

渋村:どこが鉛直壁か?
金戸:グレーの壁のところ。5・6号機側もある。
【指34 鉛直壁検討 H20.4.18】
3枚目 平面図

渋村:どの色が鉛直壁か?
金戸:青。
【指34 鉛直壁検討 H20.4.18】
4枚目 図1-3
渋村:どういう結果だったか?
金戸:鉛直壁を立てて解析。下の図は最大水位。壁直近が津波の最大水位。北から南へとなっている図。
渋村:どんな対策が考えられるか?
金戸:南東が一番大きい水位となっている。4号機タービン建屋の前から南端で最大で19数メートル。何かしら構造物が必要になる。
渋村:4m盤のポンプの対策は?
金戸:この時はイメージしていないが、建屋で囲む、水密化をすることが考えられる。
渋村:10m盤への遡上への対策は?
金戸:陸上に何か立てるならこのくらい。20mなりの陸上の壁を造る。あとは、海域に構造物を造って波を低減する。
【指35 東電設計内部資料 H20.4.18】
出席者に浅井、高井、金戸、久保?
渋村:どういう方か?
金戸:浅井さんは柏崎の津波の検討をしていた方。高井さんは工事の基本設計をする方。
渋村:高井さんは土木グループ?
金戸:はい。
渋村:高井さんとはどういう話をした?
金戸:対策工事の成立性について。
渋村:東電設計とはどういう話を?
金戸:明確な記憶はない。メモを見る限りでは、考えを聞いて、計算をお願いしますと。
渋村:他の案は?
金戸:どれを正式に依頼するかの検討のため。無駄な計算をさせないように。
渋村:鉛直壁以外の案の理由は?
金戸:津波水位が大きく、20mもの壁が、「技術的ではない」という意見もあった。基礎も相当しっかりしたものがいる。地盤はどうとか、現実的ではないという意見もあった。
渋村:では何が考えられると?
金戸:陸上ではなく、海域で何とかならないかと。
渋村:東電設計の計算を受けて、部内で横断的に打ち合わせをしたか?
金戸:何らかは。
【指36 H20.4.18 東電設計内部資料?】
1F主要敷地、鉛直壁前面で20m
渋村:これと、他の案と、いま証人が言ったことと同じか?
金戸:はい。
【指37 1F/2F津波水位に関する打合せ 議事録 H20.4.23】
渋村:建築G、機器耐震G、土木Gで打ち合わせした理由は?
金戸:津波水位結果の共有のため。
渋村:東電設計の資料を配布した?
金戸:はい…と思います。
渋村:どういう議論をしたか?
金戸:1つ目は、単純に解析を伝えた。
2つ目は、最大19m程度の水位で対外的にインパクトが大きいので、上の意見を聞こうと。
3つ目は、4m盤のポンプのところも7~10mになる。水にぬれて機能喪失する。その対策検討。
渋村:浸水は主要建物に対し「致命的」とある。どういう意味か。
金戸:私が聞いた話は、リアクター(原子炉)建屋とタービン建屋には安全上重要な設備がたくさんあって、すべて対策するのは難しい。それを聞いたのがこの時だったかも。
渋村:「インパクトが大きい」と記載もある。
DRとは?
金戸:デザインレビュー。
渋村:何のことか?
金戸:配置・レイアウトの変更が比較的大きな場合、関係者が集まってレビューする。正確な意味かは分からない。
渋村:4m盤に浸水するとポンプが機能喪失する?
金戸:「喪失」とは書いていないが、そう認識している。
渋村:今後はどうすると?
金戸:非常用海水ポンプへの対策を考えようとなった。
渋村:他社に対して報告はしたか?
金戸:いつかは分からないがしたと思う。
【指38 金戸発メール 東北電・JAEA・原電各担当者宛 H20.5.8】
概略パラスタから非常に厳しい結果
各社BCの対応を教えてください
渋村:このメールを他社に入れた理由は?
金戸:BCの状況を確認してと上司に頼まれたのではないか。
渋村:日本原電の坂上さんが「非常に厳しい」と返答している。このほか、JAEAや東北電力からメールがあったか?
金戸:記憶はないが、記録を見るとあった。
渋村:東電の方針に影響はあったか?
金戸:影響はないが、誰かに(BCについて)聞かれたら答えている。
渋村:他社にかかわらず、東電として対策を取ると?
金戸:少なくとも土木Gはそう考えていた。
11:53休廷
13:12再開
渋村:引き続き渋村からお聞きします。

5 沖合防波堤の検討

【指36 東電設計打合せ H20.5.16】
アベGM 藤井 久保
渋村:藤井さんはどんな方か?
金戸:数値解析が専門の方。
渋村:東電設計のGMが出席した理由は?
金戸:対策工の検討はしなきゃという時なので、港湾の設計に詳しい人として来てもらった。
渋村:議事内容の「①数値解析について」の説明を。
金戸:15.7mの津波は南東から遡上する。数字が大きいが、解析に余裕を見込んでいるので、実際の計算をしたらどうか、摩擦係数の変更などをしたら変わるかなー、と。
渋村:「② 津波対策」についての説明を。
金戸:土木学会でやっている手法を使うのと使わないのとで違いがあるか、南の防波堤の付け根に対策したらどうか、など、これから考えていきましょうと。
渋村:5月中に提出と。効果がありそうだと?
金戸:あたり計算をやってもらって、効果がありそうなら費用を支払って正式にやってもらうと。
渋村:このような東電設計への指示は誰からあったか?
金戸:高尾から指示された。手続きは酒井を通して。
渋村:①に、精密な計算で波を下げられないかとあるが?
金戸:波が大きすぎて、現実的ではない、実現象が再現できていないのではと思った。実現象に即してやれば違う結果になるのではと。
渋村:5月30日に「速報」と題するメールが入る。
【指39 東電設計発メール 速報 H20.5.30】
防潮堤 ケースA~D
渋村:メールで送られてきたものについて、どういう検討をした?
金戸:防波堤の付け根に、形、位置、長さを変更してみて、どんなふうに低減できるか。
渋村:Aの3つのパターンは何が違う?
金戸:Aは配置同じ。防潮堤の高さを変えて、南東敷地にどう変化するか。
渋村:Bは何を変えているか?
金戸:Aと比較して、防潮堤の形状を変えている。
渋村:Cも形状か?
金戸:はい。
渋村:高さはそれぞれ6m、8m、10mと?
金戸:はい。
渋村:結果はどうだったか?
金戸:いろいろやったが、敷地への効果はあまりなかった。
渋村:それでどんな検討をした?
金戸:沖合に、港湾より外に防波堤を置いて低減できないかと。
渋村:5枚目。この図か?
金戸:東電設計に送った図だ。
渋村:矢印が波の来る方向か?
金戸:波の方向と防波堤の漫画だ。
【指36 2枚目 H20.6.5】
金戸発メール 沖合防波堤
渋村:防波堤について誰かに相談したか?
金戸:酒井と高尾
渋村:6月10日の(武藤への説明の)検討をしたい、6月9日中に提出したいと?
金戸:(武藤へ示すために)水位の報告だけでなく、対策、解決の見込みが欲しい。
渋村:6月6日に、東電設計のアベGM、大森、久保と相談した。大森さんはどんな人か?
金戸:大森さんは解析を回す人。津波の解析、プログラムを使い数値を出す。久保さんと役割が似ている。
渋村:内容はどういうものか?
金戸:結果の報告。①は分散波の破砕減衰について。津波高さに影響なく、効果はなかった。これで終わりにした。
②は東電設計から、防波堤の設置で多少の効果はありますよ、とアドバイスをもらったので。
【指45 東電設計資料 H20.6.6】
追加検討
渋村:どんな検討か?
金戸:①に対応する。一次元解析。
渋村:「解析結果、非線形」というのは?
金戸:「ほとんど変わりませんよ」ということ。
渋村:15.7mの高さは、ほとんど変わりませんよ、ということか?
金戸:はい。
【指41 東電設計発 金戸宛メール H20.6.9】
沖合防波堤 低減できる ケースABCDEF

沖合に防潮堤を新設する検討が進められていた

渋村:ケースABCDは先ほどと同じ。ケースE、ケースFは?
金戸:Fは漫画の絵に対応する。Eは東電設計が、海岸に平行に置いて設定した。
渋村:Fは沖合にラフ絵と同じように置いて、防潮堤の高さを3パターン設定した?
金戸:はい。
渋村:Eは沖合に陸と平行に、防潮堤の高さを3パターンで?
金戸:はい。
渋村:どのパターンが一番効果的だった?
金戸:Eが3~4m浸水。Fが1~2m浸水。Fが一番効果的だった。
渋村:一番効果的なFも遡上は防げない。どう考える?
金戸:この時は現実的に考えていない。防波堤と防潮堤の組み合わせで何とかできないかなーと。
渋村:誰かと相談したか?
金戸:はい。土木技術グループの堀内と。
渋村:堀内さんは土木技術グループのどういう人か?
金戸:土木技術グループの副長。番頭のような。GMは都築。
渋村:堀内さんなどとも相談したか?
金戸:施工は土木調査Gではないので、施工については土木技術Gと。

6 2008.6.10武藤常務ヒアリングと武藤氏による指示

渋村:沖合防波堤の検討結果を持って6月10日(の武藤説明)に臨んだと。
金戸:はい。
【指42 酒井発メール H20.6.5】
酒井「6月10日お願いします。」
【指43 H20.6.10 武藤説明資料】
会議後回収された資料
渋村:誰が作成した?
金戸:私です。
渋村:酒井さん、高尾さんと相談しながら作成したのか?
金戸:はい。
渋村:どのような内容か?
金戸:説明の要点だ。
渋村:どういうことを言うための資料か?
金戸:どんな風に津波評価をしてきたか。地震本部の見解が公表されたことを、理由を示して、考慮すべきと説明しようと。
渋村:長期評価を取り入れるべきの理由は資料のどれか?
金戸:ひとつはロジックツリーのアンケート。津波ハザード結果で、専門家の意見を再掲し、「どこでも起きる」と「福島沖では起きない」では、地震学者の平均では「どこでも起きる」がやや多い。五分五分か若干多いと。
もうひとつは、ここに結果は書いてないが、津波ハザード曲線。1~6号機で地震本部の見解を取り入れると、6号機で10mの年超過確率が10マイナス5乗程度。10マイナス5乗は基準地震動策定の時の参照結果と同じ。地震と同じ年超過確率だったと。
もうひとつは、東通は地震本部の見解を取り入れていること。福島沖の津波を取り入れないと自己矛盾する。
また、今村先生や佐竹先生に相談した結果、今村先生は「考慮すべき」、佐竹先生も「難しい問題だが」と言って、考慮しなくていいとは言っていない。

渋村:そもそも資料に、地震本部の見解を出した意味は?
金戸:そもそもそれが大前提だから。
渋村:武藤に何を決めてもらいたかった?
金戸:福島第一のBCで、地震本部の「どこでも起きる」の見解を取り込んで、対策の、ある程度の見込み、「こういったことをやっていきましょう」と決めてもらえると思った。
【指44 H20.6.10 武藤説明資料 2枚目】
渋村:これはどういう目的で?
金戸:福島第一で地震本部の見解を取り入れた場合、津波がどうなるか。発電所の津波遡上分布、浸水深分布がどうなるか。敷地の、遡上してしまう南東に壁を造ると20m必要になると。
【指45】
渋村:この2枚の資料は誰が作った?
金戸:作成は私。
渋村:中身は酒井さんや高尾さんと相談してか?
金戸:はい。
渋村:1枚目は何の資料か?
金戸:ひとつは防潮壁。O.P.+10mに10mの壁。2つめは沖合防波堤。敷地遡上高さが低減できる。実際やるなら考えることあるが。
渋村:証人はどういう工事を考えていた?
金戸:沖合防波堤プラス陸上の小さな構造物。
渋村:検討スケジュールを作ったのは誰?
金戸:私。
渋村:誰と話して作った?
金戸:解析は東電設計と相談して。対策は堀内や土木技術Gの誰かと。
渋村:2枚目、「ハード対策完了不完全で」とは?
金戸:津波対策を地震本部の見解を取り入れて実施すると、平成21年3月から6月の(BCの)最終報告までに対策が終わっていない。対策が終わっていない中で、どう社会へ説明するのかを考えなければと考えた。
【指46 東電設計解析結果】
渋村:これを2枚つけた。つけた理由は?
金戸:こういった対策すれば、遡上水位を低減できると提案した。
渋村:6月10日はどういうメンバーが出席した?
金戸:武藤、吉田、酒井、高尾、堀内、機器耐震の人も村野GMがいたのでは。
渋村:村野GMはどんな人か?
金戸:所掌ははっきり知らないが、ポンプの耐震性の関係か。西村さんは地震動の評価を。堀内は工事の担当。
渋村:メモの作成は誰が?
金戸:私。
渋村:どういう話を主にしたか?
金戸:1つ目は、津波ハザードが10マイナス5乗だと。信頼性は、対策をやるかどうかに関わるので詳しく話した。
2つ目は、10m盤のほかに、4m盤の対策について。
3つ目は沖合防波堤の許認可について。
4つ目は遡上が防げない時の機器の検討。
渋村:それら4点が武藤からの指示か?
金戸:はい。
渋村:15.7mについてその前に、酒井から武藤へ15.7mの高さや対策工が必要になると説明があったか?
金戸:はい。
渋村:説明を聞いた武藤の反応はどうだったか?
金戸:具体的に覚えていない。4つの指示を言われたことは覚えている。
渋村:4m盤の指示はどういう意味か。
金戸:我々の資料が10m盤にフォーカスしすぎで、4m盤の重要設備も守るようにという指示だった。
渋村:許認可については?
金戸:実際にやるとなると現実的に必要なので。
渋村:「並行して」とはどこが?
金戸:土木調査Gの津波高さの解析と並行して、機器耐震Gの設備の対策を並行してということ。

7 武藤4項目指示を受けた社内検討

【指36 東電設計内部資料 2枚目】
6月10日 午後5:30 金戸からの依頼 「4m盤に対応」
渋村:これは?
金戸:既設の港湾の防波堤をかさ上げしたらどうなるかの検討を。
渋村:武藤への説明の後、酒井さんや高尾さんと打ち合わせしているか?
金戸:当然している。
渋村:東電設計とも?
金戸:はい。
【指48 東電設計内部資料 H20.7.8】
設計管理表
渋村:これは?
金戸:メールで資料を送った。沖合防波堤のケース。
【指49 東電設計内部資料 H20.7.8】
対策としてはケースA~F
渋村:高さ3パターンの説明書きがある?
金戸:そうだと思う。
渋村:ケースFが効果最大か?
金戸:はい。
渋村:7月8日に追加検討の結果が来たと?
金戸:多分そう。
渋村:ケースABCDEFはこれまでと同じか?
金戸:はい。
【指50 既設防波堤検討かさ上げ検討】
渋村:これはどのようなものか?
金戸:既設の防波堤を高くしていって、4m盤の浸水がどのくらい減らせるかの資料。
渋村:図の2-2は?
金戸:防波堤を鉛直にした場合。無限の(高さの)壁を置くとどうなるかと。
渋村:①~⑥の図はどういう図か?
金戸:⑥までパターンを変えていった。②が鉛直壁、無限の高さ。既設防波堤は高さを変えて、取水口高さがどうなるかと。
渋村:1枚目に戻る。最大津波の比較結果では、4m盤の浸水は避けられないと?
金戸:はい。浸水を防げない。
【指51】
渋村:ケース①~⑤はどんなものか?
金戸:既設防波堤と沖合防波堤の組み合わせ。
渋村:4m盤の検討か?
金戸:はい。
渋村:2枚目は?
金戸:既設防波堤をいくら高くしても4m盤の浸水は防げない。船舶の出入り口から浸水する。どんな風に浸水するかの状況。
渋村:3枚目はどういう検討か?
金戸:既設防波堤はそのままで、沖合に平行に防波堤を鉛直に置くとどうなるかを。
渋村:4枚目は?
金戸:それぞれのパターンに対しての、取水口前面の水位。
渋村:どういう結果だったか?
金戸:いろいろ検討したが、遡上は防げないと。
渋村:1枚目、取水口前面、ポンプ位置で浸水防げていない。
【指52 東電設計久保発メール H20.7.16】
資料受け取った 沖合防波堤ケースF ポンプ
【指53 東電設計 H20.7.15】
3枚目 ケースF1 F2 F3 F4
渋村:どういう検討か?
金戸:ケースFの派生パターン。4m盤、取水口、ポンプ位置でどうなるかを比較。
渋村:結果は?
金戸:ケースFは、10mの遡上はけっこう低減できた。ただ、4m盤の浸水を完全に防ぐのは防波堤ではできない。
渋村:ケースF3、F4は、10mは超えるが、かなり低減すると?
金戸:はい。
【指54 東電設計資料 H20.7.22】
渋村:ひとつ前の図の分解か?
金戸:まとまっていた図の分解。
【指55 東電設計資料 H20.7.22】
渋村:対策工の検討はこれ以上必要ないと?
金戸:およそ現実的ではないところまで検討したが、4m盤は防波堤では防げない。この方法では解決できないと。
渋村:10m盤への対策は?
金戸:極端にいえば10mの壁。ノーマルな対策として、陸上に何か設置すると。
渋村:酒井さんや高尾さんとは相談したか?
金戸:当然している。
渋村:東電設計の結果を見て、どのように言った?
金戸:沖合防波堤を置くと。
渋村:土木グループとして、4m盤はどういう対策になると?
金戸:設備や建築との対策の組み合わせが必要だろうと。
渋村:土木グループとしては、今後どうすると?
金戸:6月10日(の武藤説明)と変わらない。BC対策は、沖合防波堤とその他の対策を組み合わせるべきだろうと。
渋村:7月31日の、武藤への次の説明はどういうスタンスでするつもりだった?
金戸:私のスタンスは、(土木)グループのスタンスは、考え方は変わらず、宿題の回答をする。BCは地震本部を取り入れて、対策の了解をもらえればと。

8 7.23四社情報連絡会でも10月までに対策案をまとめる方針

【指56 四社情報連絡会 H20.7.23】
東電 JAEA 東北電 日本原電
渋村:どのようなことを?
金戸:各社の検討状況。武藤への説明の前に、各社の対応を知っておきたかった。
渋村:酒井も内容を知っているか?
金戸:はい。…と思う。
渋村:東電の発言「10月までには終えたい」「10マイナス5オーダー」「推本を取り入れ」、誰の発言か?
金戸:おそらく高尾。
渋村:「10月までには終えたい」とは?
金戸:10月の縛りがあったかは記憶が無い。なるべく早く、と伝えているのだと思う。
【指57 酒井発メール 高尾・金戸宛 H20.7.27】
双葉断層
渋村:酒井さんの意図は?
金戸:説明しづらいと。きちんと伝わる材料をそろえなさいと。
渋村:メールの①、「期待させてもしょうがない」とは?
金戸:いろいろ防波堤の形状を変えたりしたが、これ以上、4m盤の対策は難しい。港湾構造物ではできないと、ちゃんと伝えないとダメだと。
渋村:②「機電側への検討に移行」とは?
金戸:設備・建築側への説明をできるようにと。
渋村:③「BC報告時に対策未完であることの~」とは?
金戸:解析結果だけで、対策が無いのはダメだと。
渋村:武藤にどう説明する方針だった?
金戸:地震本部を取り入れて、津波BCを進める。対策は沖合防波堤プラス4m盤になにがしかの対策をと。
渋村:長期評価を取り入れないというのは?
金戸:想像していなかった。
渋村:対策工事をしないというのは?
金戸:無いと思っていた。

9 7.31武藤常務第2回説明

【指58 武藤説明資料 H20.7.31】
渋村:資料を作ったのは誰?
金戸:作ったのは私。
渋村:7月31日の(武藤説明の)資料か?
金戸:はい。
渋村:何が書いてある?
金戸:東電設計の解析結果の要点。沖合防波堤で10m盤の浸水は防げない。4m盤も多少低減できるが、対策ができるかどうか(わからない)。工期長くなるが(大規模工事は)まだそこまで検討していません。4m盤を(構造物で)全部防ぐのは難しい。建設費は数百億円かかる、と。
渋村:コスト、施工実現性は?
金戸:防潮堤はものすごくお金がかかる。防潮堤と機器の対策、両者の折衷案で費用が一番安くなるように試算。本当にできるのか。
渋村:「数百億円規模」は誰が?
金戸:土木技術Gに聞き取りしたと聞いた。
【指59 武藤説明資料 H20.7.31】
【指60 「港湾許認可」 武藤説明資料 H20.7.31】
渋村:資料の作成は?
金戸:土木技術G。
【指61 「留意すべき」 武藤説明資料 H20.7.31】
【指62 「工程案」 武藤説明資料 H20.7.31】
渋村:資料の作成は?
金戸:土木技術G。
【指63 武藤説明資料 H20.7.31】
【指64 「津波ハザード」 武藤説明資料 H20.7.31】
渋村:どこからの資料か?
金戸:東電設計に昔委託したときに頂いた資料から一部手を入れて作った。
渋村:津波ハザードを東電設計に委託して、その資料か?
金戸:はい。
渋村:6月10日の宿題にかなり準備をして臨んだか?
金戸:はい。
渋村:7月31日の資料はどういうものか?
金戸:質問にきちんと答えて、地震本部を取り入れて津波BCの対策をしていくという意思決定をしてほしいと。
渋村:6月10日と同じメンバーか?
金戸:全く同じかは……だいたい同じだと思う。
渋村:7月31日は誰が説明したか?
金戸:記憶はないが、たぶん酒井だと思う。
渋村:資料に基づいて説明したのか?
金戸:多分。
渋村:武藤の反応は?
金戸:最後に「研究しよう」と言ったのは覚えている。「研究」という言葉は間違いなくあった。
渋村:結論はどうなった?
金戸:(武藤が)「研究をやろう」と。酒井が、やるなら電共研と。電事連に(電共研の)申請手続きが間に合うかと酒井に聞かれ、ぎりぎり間に合うのではと答えた。
渋村:BCをどうするかは?
金戸:BCに通らないリスクは伝えた。おすすめの案を伝えたつもり。地震本部の見解は、「絶対起こる」とは言っていない。消去法的に、起こるかどうかわからないということだから、(地震本部の見解を取り入れないという)経営判断には従うべきだと思った。
渋村:土木Gの考えとは違うが?
金戸:その当時は経営者の経営判断に基づいてやるのだと。
渋村:資料は出して、後は経営判断に従うと?
金戸:絶対に起こる、ならあり得ないが、起こるか分からない上での経営判断だから。
渋村:対策工事は必要だと思わなかったか?
金戸:対策工事は必要だと思った。それなりの高さの波が来ることは、いつかはある。時間が掛かるが、いずれやるのだと思った。

10 太平洋岸各社に方針変更を説明

【指65 酒井発メール H20.7.31 11:01発信 日本原電・東北電宛】
渋村:すぐに酒井さんが社外にメールを出しているが?
金戸:これまで社外に説明していたのと180度変わるので、早く伝えないと、と思ったのではないか。
渋村:7月31日の会議は議事録が作成されていないが?
金戸:会議が終わってすぐ、上司がメールで発信したから、議事録はいらないと思ったのかもしれない。
渋村:(メール本文の下部にある)「社内向け」というのは?
金戸:延宝房総沖波源を福島に持ってこようというのと、ハザードの重みを50:50にした時にハザードがどうなるかと。
【指66 東電設計内部資料 契約内容変更書 H20.8.4】
日本海溝房総沖モデル
渋村:酒井さんが東電設計に依頼した。委託担当者として証人の名前がある。日本海溝プレート間に房総沖のモデルを依頼したもの。7月31日に福島沖波源モデルを追加している。なぜこのタイミングで(追加の)依頼をした?
金戸:可能性のあるパターンは全て持っておきたいからでは。
【指67 日本海溝津波に関する打合せメモ H20.8.6】
原電…安中  東電…酒井、高尾、金戸、堀内、
渋村:なぜ堀内さんがいるのか?
金戸:対策工の絡みだろうか。
渋村:3枚目の「取扱注意」の資料を作ったのは誰か?
金戸:私ではない。高尾か?
渋村:「推本の見解を否定するのは不可能」とある。見解は否定できないか?
金戸:完全否定は困難。地震本部の見解を否定するのは無理。
渋村:「土木学会手法の改訂前までに」とは?
金戸: できることを進めておきたいということ。
渋村:「随時進める」とあるが?
金戸:できることから、という意味ではないか。明確な意思ではない。やれるところからと。
渋村:武藤に報告した後も、長期評価は最終的に否定はできないと考えていた?
金戸:それは変わっていない。

11 有識者工作の開始

【指68 高尾発メール 酒井・金戸宛 H20.8.11】
「世間(自治体、マスコミ)がなるほどという説明がすぐには思いつきません」
渋村:酒井さんの返信メールには、酒井さんからのどういう指示があったか?
金戸:高尾の意見を受けて、方針を(有識者の)先生に説明して合意形成を早くと。
渋村:ここの「有識者」は誰?
金戸:阿部先生、今村先生、高橋先生、他に地震や津波の専門家。
【指69 酒井発?メール「福島の津波の件」 高尾・金戸宛 H20.8.18】
渋村:8月の安中さんからのレポートは?
金戸:記憶は無い。資料を見て確認した。
渋村:「日本海溝は、南部と北部で分かれる可能性」があると。東電は南北を分けるやり方は取っていない?
金戸:北と南を確実に分けられるとか、「どこでも起きる」を否定できる材料は出せない。
渋村:869年貞観の対応について、「電共研で時間を稼ぐは厳しくないか」と。貞観について心配をしている理由は?
金戸:貞観の心配がいつからかは……。佐竹先生の論文を受けて、それから気にし始めた。
【指70 東電設計資料 H20.8.22】
福島第一 1677モデル 結果
【指71】
渋村:メールで受け取ったと。これのことか?
金戸:はい。
渋村:2枚目、1677の4つのモデル。どう違う?
金戸:茨城県モデルは不均質モデル。土木学会モデルは平成14年2月の(津波評価技術)。土木学会80Km延長モデルは、土木学会モデルの計算より茨城県での(実際の)痕跡高が大きいので、Mwが大きくなるよう80Km延長したモデル。想定モデルは80Km延長モデルを丸めて数字を調整した、最終的なモデル。
渋村:3枚目の図は?
金戸:赤は茨城県の不均質モデル。上書きの青は土木学会津波評価技術のモデルで、赤(茨城県モデル)が再現できていない。青を80Km北に延長したのが80Km延長モデル。想定モデルは書かれていない。
渋村:4枚目は概略パラスタ。5枚目は詳細パラスタ。どういったものか?
金戸:敷地南に概略パラスタをやって、詳細パラスタをやると13.057m。朔望平均満潮位を足して、最大で13.552m。房総沖モデルを置いても約13.6m。
渋村:上司に報告はしたか?
金戸:覚えていないが、したと思う。
渋村:房総沖モデルでもこの結果だということであれば、「すぐに対策を」とはならないのか?
金戸:より大きな(15.7mという)数字が出ていた。包含していた。方針は変わらないと。
渋村:対策が必要なのは変わらないということが、改めて分かったと?
金戸:はい。

12 2008年9月福島第一幹部にも津波対策は不可避と報告

【指72 耐震バックチェック説明会 H.20.9.10】
渋村:この会議の目的は?
金戸:全体の目的は知らずに(説明を)言っている。耐震BCの一連の経過報告と、その中の津波についての情報共有をした。
【指73 酒井発メール H20.9.8】
(10日の会議では)「津波については真実を記載して資料回収」
渋村:どういう意味か?
金戸:武藤への説明をちゃんと記載して回収すると。
渋村:「海岸構造物は近傍集落に影響があり現実的でない」とは?
金戸:対策工事が大掛かりになる。吉田が「波が反射して集落に良くないんじゃないか」と言った。
渋村:「平成14年バックチェックベース(改造不要)で乗り切れる可能性は無く、数年後には(どのような形かはともかく)推本津波をプラクティス化して対応をはかる必要がある」とは?
金戸:何も対策しなくていいとはならない。いずれやらないと。
【指74 耐震バックチェック説明会 資料 H.20.9.10】
渋村:誰が作成した?
金戸:おそらく私。
渋村:どんな資料か?
金戸:武藤への説明の資料とほぼ同じ。これまでと変わらない。地震本部の見解を取り入れないと、というもの。
渋村:この資料は?
金戸:これもほぼ、(武藤説明と)同じ。敷地遡上の最大がどの程度か、対策をしなければ、という資料。
渋村:「今後の予定」のところに、「地震調査研究推進本部(推本)の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると~津波対策は不可避」とあるが?
金戸:酒井のメールとほぼ同じ。地震本部の知見を取り入れないでやるのはほぼ無理だと。対策をいずれ何かしなくてはと。
渋村:7月31日の(武藤の先延ばしの)後もこのような記載を入れたのはなぜか?
金戸:実際の状況を正しく伝えようとしている。
渋村:津波対策が不可避だということを周知するためと?
金戸:はい。対策するとなると、工事の設計、発注があるから、早め早めに認識してもらう必要がある。いきなりではまずい。
【指72 耐震バックチェック説明会 H.20.9.10】
福島第一 計18名
渋村:18名はどういった人か
金戸:所長をトップとして、マネジャー、発電所管理職で出られる人を集めた。
渋村:「機微情報のため資料は回収、議事メモには記載しない」とした?
金戸:事務局がそうした。理由は私にはわからない。外に漏れると説明しづらいからでは。
渋村:証人から必要な説明をしたか?
金戸:はい。
渋村:津波対策が不可避という説明もしたか?
金戸:説明していると思う。
14:55 休廷
15:15 再開

13 有識者工作の進展と貞観津波の検討

渋村:引き続き、平成20年10月からのことを聞きます。
首藤、佐竹、高橋、学者訪問の目的は?
金戸:大枠として、土木学会津波評価技術の改訂で新しい波源の設定をするから、改訂される土木学会手法でBCをすることについて先生に意見を聞いてみると。
渋村:高尾からの報告はあったか?
金戸:簡単な議事録を共有した。
渋村:今村さんへの訪問は証人も同行したか?
金戸:はい。
【指75 今村教授訪問 H20.10.28】
【指76 今村教授訪問時提出資料】
渋村:どういう相談を?
金戸:土木学会の津波評価技術が改訂されるので、こんな風に進めたい、先生の意見を、と。
渋村:どういう理由で資料を持参した?
金戸:津波評価技術の改訂で、技術的課題の審議をしてもらいたいと。
渋村:今村さんにはどう説明した?
金戸:電力共通研究でやると。東電の長期評価の扱いは、その中で扱い、必要な対策をしたいと伝えた。
渋村:理解されたか?
金戸:はい。
渋村:貞観の津波の解析は東電設計に依頼した?
金戸:はい。
渋村:結果は?
金戸:海水ポンプで7~9mくらい。10m盤に浸水はなかったと思う。
渋村:酒井さん、高尾さんとも共有したか?
金戸:はい。
渋村:貞観津波についてはどう考えていた?
金戸:佐竹先生の論文を受けて、津波堆積物の調査を詰めないといけないと。まだ不確定なので、研究に取り込んで電共研として土木学会で審議してもらうと考えた。
渋村:推本は取り入れないといけないと考えたのに、貞観はそうではない?
金戸:まだ不確定なものは土木学会で議論する。そう武藤の意思決定がされた。貞観も同じ状況で、研究で考えてから取り込もうと。貞観も同じかな…と。
【指78 吉田部長説明 H20.11.13】
渋村:どういう説明を?
金戸:土木学会手法の評価、茨城県の評価、地震本部の評価、どういう関係になっているか、波が大きくなっていくということを。
渋村:2枚目は?
金戸:先生に説明に言った状況報告を示した。
渋村:◎や○、△はどういう意味か?
金戸:私がつけた。◎は特に異論無し。○は否定はされなかった、消極的なもの。△は否定的な意見。
渋村:3枚目は?
金戸:佐竹先生の論文。貞観波源モデル。最終的な2つのモデル。
渋村:これに基づいて吉田部長に報告した?
金戸:はい。
【指79 日本原電 東電との情報連絡 H20.12.1】
渋村:どういう会議か?
金戸:目的は覚えていない。津波についてお互いの状況を情報共有したのだと思う。機器耐震G、建築G、津波対策の方の検討のグループがいる。
渋村:集まった理由は?
金戸:おそらく、津波を評価して対策が必要になるので、いいアイデアがあればと期待して。
渋村:「<東電の対策工>」誰が記載した?
金戸:私ではなく、機器耐震ではないか。
渋村:水密モーターなど、対策の具体的な認識はあったか?
金戸:認識はない。
渋村:阿部先生からはどう言われた?
金戸:地震本部を取り入れないなら、材料出さないとダメだと。

14 2009年 足踏みする津波対策と高尾GMの危機感

渋村:平成21年に入って、津波対策をどう検討していたか聞く。
【指80 機器耐震GM宛連絡 H21.2】
渋村:これは?
金戸:ポンプの対策のため、津波時刻歴波形が欲しいと言われ、回答した。
渋村:機電側は水密化の検討をしていたか?
金戸:詳しくは分からないが、検討していたのは確か。
【指81 機器耐震G長谷川から H21.4.27】
BC 1F水位上昇側 ポンプ
H21.5.13 金戸発メール
渋村:津波水位評価について送ったか?
金戸:そうですね。何か書いて、追記した。
【指82 酒井発メール H21.3.7】
山下からの指示 高尾・金戸宛
渋村:どのような内容か?
金戸:山下が武藤と話した。福島の津波を心配したから。資料を整理せよと。
渋村:3月12日の金戸さんのメールは?
金戸:武藤への説明期日が決まっていないから。
【指83 メール添付資料】
渋村:これは?
金戸:メールに添付されていたものか?
渋村:はい。
金戸:武藤へ情報インプットのためのドラフトの資料ではないかと。
渋村:これを基に(山下が武藤に)説明をしたのか?
金戸:私にはわからない。
渋村:津波対策は進んでいたか?
金戸:具体的に進んでいたという認識はない。
渋村:高尾さんの進言とは何か?
金戸:対策の検討が進んでいないからと。
渋村:津波入力側のグループと対策の検討グループが並列だと?
金戸:取りまとめて全体をマネジメントする人が必要という提案。
渋村:高尾さんは何を考えた?
金戸:対策はいずれやらないといけない。対策する方のグループは認識が甘い。強く意識されていない。何とかして強く進めたいという思いだと思う。
【指84 金戸発メール 酒井、高尾、都築ら宛 H21.6.30】
津波対策工の検討について
渋村:証人が作成した?
金戸:はい。
渋村:どういう資料か?
金戸:高尾の指示で、津波水位評価のグループと対策のグループが並列なので、全体を取りまとめ、全体を把握しているグループが必要と。
渋村:どうなった?
金戸:酒井に話し、酒井からしかるべき人に言ってもらった。しかし、ちゃんと対策を進めているから(新体制は)必要ないと。
渋村:対策が進まないことに証人はどう思っていた?
金戸:なんで早く進まないのか……フラストレーションは溜まっていましたね。

15 ようやく始まった福島地点津波対策ワーキング

渋村:福島地点津波対策ワーキングが始まったきっかけは?
金戸:日本原電から対策の話を聞いて、高尾が危機感を持った。東電は遅れていると。そこから始まった。
渋村:地震対策センター長と土木調査GMが変わった?
金戸:センター長が土方、GMが高尾になった。
渋村:この(津波対策WGの)会議の目的は?
金戸:地震本部の知見、貞観の津波など、対策が必要と思っていたものにどう対策を取るか具体的にする。
渋村:平成20年7月末から2年が経った。津波対策の検討は進んでいたか?
金戸:基本的にあまり進んでいなかった。
渋村:証人は(土木学会原子力土木委員会)津波評価部会の幹事だったか?
金戸:平成19年7月、そのころはそうだ。
渋村:(津波評価部会)第3期の途中か?
金戸:はい。
渋村:幹事は何をするのか?
金戸:電力共通研究の計算と、成果を専門家に持って行ってそれが妥当か審議してもらう。計算と、専門家の審議、幹事は両方をやる。審議事項をまとめる。
渋村:武藤説明の後、電力共通研究に関わったか?
【指85 電力共通研究 新規提案理由書】
金戸:私が作成した。
渋村:段取りは?
金戸:これは提案書だが、毎年夏に新しい理由書を電事連に提出している。電事連に承認されたら、幹事会社が発注する。
渋村:この時点の幹事会社は東電か?
金戸:はい。
【指86 津波評価部会第4期 第1回津波評価部会】
2枚目名簿 原子力土木委員会津波評価部会
主査 首藤伸夫  委員に高尾ら
渋村:幹事はどういう人たちか?
金戸:まず電中研の人。研究は2本立てで、数値計算の担当として東電設計、ユニック、三菱総研。幹事会社の東電から私ともう1名。
渋村:幹事団とは?
金戸:ニーズを取りまとめる。こういう研究をやりましょうと、土木学会に審議してもらうものをまとめる。
渋村:部会へは幹事団から提案をする。その提案資料は幹事の中でまとめると?
金戸:元になる提案材料を用意するのが東電設計、ユニック、三菱総研。あとは電中研、東電、場合によってはそれぞれの会社の上司に相談して。
渋村:中身によっては高尾さんとも相談したか?
金戸:基本的に全て相談していた。
【指89 第1回福島地点津波対策ワーキング 議事録 H22.8.27】
渋村: どういう会議か?
金戸: 土方センター長をトップとして、土木調査Gと対策をするグループ、全体を見るグループも参加して。
渋村:津波対策の関係者みなさん集まって検討する会議だと?
金戸:それでいいです。
渋村:「土木調査Gから報告」、「機器耐震Gから報告」、機器耐震Gからはどのような報告があった?
金戸:機器耐震Gの電計班から、BCを土木学会手法でやろうという場合の、O.P.+6.1mへの対策は進んでいるが、地震本部(を取り入れた場合)のO.P.+10mでは機器の機能が維持できない。実現性の可否を含め検討中と。
渋村:地震本部の10mの波では「ポンプが衝撃に耐えられない」と。対策は必ずするつもりだったか?
金戸:はい。
渋村:建築Gからは?
金戸:福島第一のグループから、1Fは海水ポンプが(屋外設置で)露出しているので対策が必要だと。2Fは想定水位が上がって建屋の水密化をやっていたが、地震本部の10m越えの津波はさらに対策が必要。
渋村:屋外設備の建屋新設についてどのような検討を?
金戸:記憶していないが、ポンプを建物で囲う検討をしたが、大規模な工事が必要で、地盤のすぐ下に取水路があるので難しいとなった。
渋村:第1回WGはどんな議論になった?
金戸:1回目なので、こういう風にやりましょうと、それぞれの状況を説明した。
【指90 第2回福島地点津波対策ワーキング 議事録 H22.12.6】
それぞれのグループの報告内容
渋村:どんな会議だったか?
金戸:各Gからこんな問題あって難しいと。土方センター長が「そんなこと言ってないで何か考えろ」と言った。
渋村:1枚目、下のところ、機器耐震Gの報告に、「衝撃力にポンプが耐えられない。運転不可となる」とあるが?
金戸:大きな津波を考慮すると設備がもたない。ポンプが動かなくなる。津波があったらこんなことになる、動かなくなる、と言っている。
渋村:2枚目、建築耐震Gから、「1F現場を確認」「他ポンプ、機器、配管濫立、非常用海水ポンプのみ建屋で囲うのは困難」とあるが?
金戸:現場から、ポンプを建屋で囲うのは難しいと説明があった?
渋村:「今後」のところ、「解決困難でもやめないこと」は誰の発言か?
金戸:土方さん。「ダメと言わず何とかしろ」と。解決方法を考えろと怒っていた。
渋村:土方さんが怒るような会議だったと?
金戸:そうです。
【指87 平成22年度 第2回津波評価部会 議事録 H22.12.7】
渋村:波源についての検討がされた。幹事に、証人や東電設計の安中さんの名前がある。委員に高尾さんがいる。
【指88 第2回津波評価部会 議事録 H22.12.7】2枚目
波源モデルに関する検討 ―日本海溝沿い海域の波源域について―
【指93 津波評価部会 第4期活動概要 H22.11.7】
11月1日とあるが誤記で7日が正しい。
【指88】
渋村:どういう提案か?
金戸:「日本海溝沿い海域の波源域について」のことでいいですよね?
渋村:「まとめ」の案について。どういう内容の提案か?
金戸:1つ目は地震本部の見解について、日本海溝沿い領域の北部と南部を分割する。北と南は規模が違う。南のすべり量が小さいモデルは1677で設定する。
渋村:この提案の取りまとめは、どういうメンバーで議論した?
金戸:誰がどうかは……。東電設計の藤井さん、安中さんと相談した。技術的に裏付けできるかを。技術的に明確に言えるものは無かった。南部と北部の分割は、ロジックツリーアンケートの結果を踏まえて、分けられると。
渋村:取りまとめは誰が行った?
金戸:藤井さんだったんじゃないか。
渋村:証人も関与した?
金戸:はい、もちろん関与した。
渋村:12月7日の審議で異論はあったか?
金戸:先生からも異論は無かったと記憶している。
【指91 第3回福島地点津波対策ワーキング 議事録 H23.1.13】
金戸出席
土木調査Gの報告 地震本部の見解は、波源を三陸沖北部で想定しているが、南部は北部と異なることから房総沖の波源を設定する
渋村:この会議はどういうことを?
金戸:それぞれのグループから、最新の情報が報告された。土方(センター長)から「やめないこと」と指示されたので、具体的な対策について。
渋村:2月14日の第4回WGに証人は異動で出ていない?
金戸:はい。
渋村:3.11までに対策は取られたか?
金戸:地震本部の見解に対しての対策はされていない。
渋村:3.11の時はどこにいたか?
金戸:(異動で)東通の事務所にいた。東京に戻ろうと、三沢空港にいた時だった。
渋村:原発の浸水を知って、何らかの対策を取っていればと思ったか?
金戸:後で解析してわかったのだが、地震本部の見解を考慮した場合は敷地南東からの波だが、インバージョンで今回の遡上パターンは全然違う。あの対策だけでは、多少楽にはなったろうが、あの対策をしていても防げなかった。
渋村:3.11の時は、何を思っていた?
金戸:最初に震源を見た時に、女川の方が心配だった。そのあと震源の大きさを見て、地震本部のモデルと違って巨大だった。(地震本部の想定の津波か)多少は考えたが、地震本部とはあまりリンクしないな、と思った。
渋村:終わります。
16:14閉廷

16 まとめ

  • 金戸氏は高尾氏の忠実な部下であり、推本の評価などについては、基本的な見解は一致している。
  • 「津波がNG」とは、水位を超えると重要機器に直結し、プラントの安全性が守れない。社会への説明の方法を考えないといけないということだ。
  • 地震本部の「どこでも起きる」を取り入れて、Mw8.3の波源で土木学会手法でパラスタして、福島沖に波源を置いて計算する方針は酒井GMまで一致していた。
  • 対策としては、ひとつは防潮壁。O.P.+10mに10mの壁。2つめは沖合防波堤。敷地遡上高さが低減できる。そして陸上の小さな構造物を考えていた。
  • 推本の長期評価を取り入れようとした理由は、ひとつはロジックツリーのアンケート。津波ハザード結果で、「どこでも起きる」と「福島沖では起きない」では、地震学者の平均では「どこでも起きる」がやや多い。五分五分か若干多かった。
  • もうひとつは、津波ハザード曲線。1~6号機で地震本部の見解を取り入れると、6号機で10mの年超過確率が10マイナス5乗程度。10マイナス5乗は基準地震動策定の時の参照結果と同じ。地震と同じ年超過確率だった。
  • もうひとつは、東通は地震本部の見解を取り入れていること。福島沖の津波を取り入れないと自己矛盾する。
  • また、今村先生や佐竹先生に相談した結果、今村先生は「考慮すべき」、佐竹先生も「難しい問題だが」と言って、考慮しなくていいとは言っていなかった。
  • 6月10日の説明では、武藤に福島第一のBCで、地震本部の「どこでも起きる」の見解を取り込んで、対策のある程度の見込み、「こういったことをやっていきましょう」と決めてもらえると思った。ところが、武藤が「研究をやろう」といった。酒井が、やるなら電共研と答えた。電事連に(電共研の)申請手続きが間に合うかと酒井に聞かれ、ぎりぎり間に合うのではと答えた。BCに通らないリスクは伝えた。おすすめの案を伝えたつもり。地震本部の見解は、「絶対起こる」とは言っていない。消去法的に、起こるかどうかわからないということだから、(地震本部の見解を取り入れないという)経営判断には従うべきだと思った。それは、土木Gの考えとは違うがその当時は経営者の経営判断に基づいてやるのだと考えていた。
  • その後も津波対策が進まず、フラストレーションを感じていた。
  • 東海第2で津波対策が進んでいることがわかり、高尾GMのもとで2010年に各グループ横断で福島地点津波対策ワーキングが立ち上げられた。
  • 武藤と山下は津波対策のことはその後も気にはしていた。

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