佐藤和良(福島原発刑事訴訟支援団 団長)・武藤類子(福島原発告訴団 団長)より11月2日東電刑事裁判の控訴審に向けたご挨拶

佐藤和良あいさつ(福島原発刑事訴訟支援団 団長)

東京高裁前にお集まりのみなさま。
 とうとう、今日という日が来ました。いよいよ福島原発刑事訴訟の第1回公判が開かれます。
2年前の2019年9月19日、東京地裁の永淵裁判長が、津波対策を怠って、福島原発事故を引き起こし、多くの犠牲者を出した3人の刑事被告人に対して、全員無罪という不当判決を下して以来、私たちは、東京高裁での控訴審が始まるのを心待ちにしていました。

福島原発事故の被害者・被災者を踏みにじる、東京地裁の不当判決は、被害当事者はもとより、多くの国民が納得も承服もできない、許すことのできない判決です。わたくしは、あの悔しさ、あの屈辱を忘れることができません。

福島原発事故の真相を明らかにし、事故の責任を問う、福島原発刑事裁判は、幾多の困難を乗り越えてきました。
控訴審では、「『長期評価』の信頼性を否定し、万が一にも事故を起こしてはならないという社会通念にも著しく反する」地裁判決の事実誤認を覆すために、何としても、証人調べや現場検証を実現しなくてはなりません。

2012年6月の福島地検への集団告訴から始まった福島原発事故の責任を問う闘い、全国の仲間も鬼籍に入られた方が多くいます。この秋、いつも私たちの先頭に立ってきた、人見やよいさんや長谷川健一さんが旅立たれました。ほんとうに残念でたまりません。

今、私たちは、改めて無念の死を遂げた被害者、その遺族、そして被災者の10年を心に刻み、決して諦めず、前進します。

本日、東京高裁に駆けつけることは、叶いませんでしたが、心は皆さまとともにあります。ともに手をつなぎ、証人調べや現場検証を実現して、東電刑事裁判・控訴審の勝利を掴み取りましょう。心からお願い申し上げます。

2021年11月2日 福島原発刑事訴訟支援団 団長 佐藤和良

武藤類子あいさつ(福島原発告訴団 団長)

皆さま、おはようございます。
議会の会期中のために来られない佐藤団長に変わって、ご挨拶を致します。
本日は、お忙しい中を、東京高裁前にお集り頂きまして、ありがとうございます。
いよいよ今日から「東電刑事裁判の控訴審」が始まります。
2019年の、「全員無罪」の地裁判決から2年。あの日の悔しさ、納得できない思いを私は忘れることができませんでした。
今日は、控訴審での公正な審理を期待して、この場にやってきました。

この間にも、福島では様々なことが起きています。
今年は、とうとうコロナ禍の中、オリンピックの聖火リレーが帰還困難区域のすぐ側でも行われました。2年後に汚染水を海洋放出するという決定が強引にされました。汚染土の再利用を推進するためのフォーラムが盛んに行われています。県民健康調査での甲状腺がんとその疑いは266人になりましたが、検査の縮小論が繰り返えされています。
多くの問題が山積している中、莫大な復興予算を投じて「福島イノベーション・コースト構想」なるものがブルドーザーのような勢いで進められ、大規模な施設が次々に建てられていますが。
被害者が望む復興と大きな乖離を感じます。
原発事故から10年の月日は、私たちが愛した故郷の形をどんどん変容させていきます。原発事故さえなかったらと思わざるを得ないのです。

そして、今日ここには、東京地裁での一審の裁判に、欠かすことなく傍聴に訪れ、地裁前での集会で毎回元気にアピールし、歌を歌っていた人見やよいさんの姿がありません。9月の末に癌の闘病の末に亡くなりました。「一緒に控訴審の傍聴に行こうね」と約束していましたが、叶いませんでした。
2012年の告訴から、9年半の月日が流れ、ともに闘ってきた仲間の多くが天に旅立たれました。つい先日、2015年1月の、国の責任を問う第二次告訴をご一緒に行った飯舘村の長谷川健一さんも、甲状腺がんで亡くなられました。やはり、原発事故が無ければ、このような死ではなかったのではないかと、思うのです。
その方々のためにも、そして原発事故のすべての被害者のためにも、裁判の場で最も責任のある3人の罪を裁いてほしいと心から願います。被害者が原発事故によって奪われたものの多くは、もう元には戻らないのです。被害者の人生は、皆、事故によって変わりました。

せめて、二度と同じようなことが起きないために、二度と私たちのような被害を受ける人がいないように、この裁判を負けるわけにはいきません。
なぜこんな事故が起き、誰がその責任を負うべきなのかは地裁の公判で既に明確です。
このまま、責任が曖昧なままでは、本当の意味での再生や復興はできません。そしてあらゆる命の安全が最優先される社会に変えていくことはできません。

去る10月29日に、東京地裁の裁判官が株主代表訴訟の「現地進行協議」として、福島第一原発の敷地内に入り、詳細な視察をされました。やはり現地を見れば、津波の痕跡、原発事故のすさまじさ、原子炉の立地、海からの距離などを五官を通して感じることができたと思います。そして詳細な検証ができたと思います。
東京高裁も、福島第1原発や双葉病院の現場検証や、新たな証人を呼んでの尋問、証拠調べを是非行って下さい。
私たち被害者にとって、裁判所は正義の砦だと信じています。どうか、お願いします。

皆さん、東京地裁の不当な判決を、この控訴審で覆すことができるように、どうか力を貸してください。ともに闘い、この社会を変えていきましょう。
今日一日をどうぞよろしくお願い致します。

2021年11月2日 福島原発告訴団 団長 武藤類子